2222!
47、48、49、50、51秒・・・・・・・・・・・来ねぇ・・・・・・11時45分59秒
はぁ〜っと、意識しないのに勝手に溜息が口から出て行く。
なんで電話して来ねんだ、アイツ。オカシイダロ
いっつもウザイくせに、なんでだよ、アホ。
雪降ってて電波の関係で携帯繋がンね、とか・・・・・・それとも風邪引いてぶっ倒れてるとか・・・
またちらりと携帯の電子時計を見る。
11時48分37秒
もう今日が終わるっつーのっっっ!!!
オレはベットに寝転がったまま携帯を睨みつけた。
こんな事を女々しく気にする自分にも腹が立つけど、かけて来ないアイツもあいつだ。
今朝というか今日になった瞬間の夜中からずっと利央の電話を気にしている。
毎年アイツは必ず今日に変わった瞬間に電話くれていたからなおさらで、かかってくるんじゃないかと気になってて夜もなんとなくよく眠れなかった。
あっちでなんかあったのかな・・・・・・・・そもそも利央のお祖母さんが入院したっていうんで今年は1月の途中からブラジルへと行ってしまったんだった。
オレは大学があって1人暮らししている都合上いまは家も遠くて、そうそう頻々には逢ってない。
ヤツは早ばやと大学も推薦で決まり、正月にふたりであったきり、ブラジルに行くのだって向こうにつ
いてからの連絡で突然だった。
いままでも推薦枠とはいえ受験で忙しくて、年末に決まったと思った途端にコレで…
あまり話も出来てなくて、正月に会った時だってなんかそっけなかった。
他のヤツが好きになったんだろうか?
そういえばすごく何か言いたげなカオしてたな…
ふっと浮かんだ疑問に捕まってしまって考えなくていいような事までドンドン考えてしまう。
だいたい利央が凄くモテてるのは知ってる。
アイツはオレに絶対にそういう事は何も言わない。
でも部活の最中に利央くーん、とか声援が飛んでくるのだって頻繁にあったし、カントクがそういうチャラチャラしたの嫌いだからっていう理由で、声援をくれた女の子達にそれを伝えて詫びているのも知っている。
ああいうヤツだから、きっとオレが知っている以上にモテてるはずだ。
だから・・・・・・・
離れてる間に実は誰か好きな子が出来てたって不思議じゃない。
アイツにはキレイ系なお姉さんから、すっげー可愛いオンナまでヨリドリミドリな状態に寄ってくる。その中の誰かが超好みだったっておかしくない。
あれだけモテたらその中の1人くらい好みど真ん中だっているだろう。
そもそもなんでオレと付き合ってンだ?
男同士で周りには当然内緒だし、家族にだって紹介できない。
利央の性格からしたらきっと家族に紹介して、友達にも紹介して、それでオープンに付き合いたいのに違いないだろう。
ドウシテオレナンダ ソンナ必要 ナイ ヨナ
時計の表示がパッと変わって11時53分00秒・・・・・
時差12時間あるって言ってたから、きっと・・・・・・・忘れてるんだ。
お祖母さんの事だってあるし、利央は優しいし、バァちゃん子っだって言ってたし・・・・・
11時54分28秒
チカチカと表示が変わっていくのを見ていたら何だか悲しくなってきた。
今は他に優先することがあるって判ってるし、そもそも地球の裏側だって知ってる。
オレの誕生日どころじゃないのかもしれないし…そうじゃない方がイイケド。
11時55分06秒
今日はもう連絡は来ないだろう。
いつもオレのこと考えてる訳じゃない、オレだってそうだ。
だからこんなことで、利央責めたりしないようにしよう。
ただの我儘なんだから
でも 誰か他に好きなヤツ出来たんだとしたら・・・・・
オレはおめでとう、って言えるかな。
正直そんな自信ナイ・・・・・・めり込む。
11時56分44秒
別に誕生日を祝って欲しいんじゃないんだ
ただ 利央にどうしょうもないほど逢いたい。
今すぐに逢いたいだけなんだ。
「・・・・・・りおう」
逢いたい。
しんと静まり返った中にいきなり、コンコン!って言うノックの音が響いてオレは飛び上がりそうなほど吃驚した!ワンルームのアパートの扉を凝視する。
クラスのヤツラが酔っ払って来たとか?まさか押し売り?こんな夜中に?!
「・・・んさーん」
ええ!!
オレは飛び起きて急いでドアを開ける。その向こうにまさかのブルプル震えながらジャンパーにジーンズの薄着、マフラーに顔の半分まで埋まった利央がいた!
リュックと片手にはケーキの箱らしきものまで持ってる。
「じゅ、準さん、ハピ、バースディ!」
「なっんで?! オマエ、ブラジルじゃなかったのかよっ!?」
「うん、へへーぎりぎり間に合ったよね」
そう言うなり、マフラーをちょいっとズラして唇にチュッとキスを落としてくる。
あ、コイツ完全にブラジルナイズされてる!人ン家の玄関先でナニをする!!
・・・・・・・・・でも嬉しいのはナンデダ。
「さ、寒いから、サ、とりあえず入っていい?」
「お、おう」
玄関に入った途端に靴も脱がずにぎゅうっっと利央に抱きしめられた。
「じゅ、さ、逢いたかった・・・・・」
その声音は利央も逢いたいと思っててくれたんだって気持ちが滲んでて、さっきまでのバカバカしい考えが利央の熱い声に蕩ける。
冷気を含んだ髪はしっとりしてて、頬も冷たかったけれど、改めてあわせた唇と舌は熱くて、こころの真ん中にその熱はするりと簡単に入ってきた。
ああ 利央だ。
「りお・・・」
「すごく逢いたくて、驚かそうと思ったんだけどさ、雪で飛行機は遅れるは、電車は遅れるはで、今日中に着けないかと思って焦った」
「うん、そういえば珍しく大雪だよな。お祖母さんはいいのかよ?」
「うん!ありがと準さん。ギックリ腰なだけだったんだよね〜、ま、ヨカッタけどね!あはは」
気が抜けた〜。ただコイツが笑ってるからそれでいいかと思えた。
それにしても道理で今日は冷えたはずだ。オレが家の中で悶々としている間にも雪はしんしんと音もなく降って辺りを真っ白に変えてた。
そこにピピッ!って電子音がして、利央が笑った気配がした。
間にあってよかった〜っていう心底ヨカッタ風な利央のつぶやきにこっちも笑いが漏れた。
そんなに気にしてくれててオレは嬉しいし、逢えるなんて思っても見なかったからすごいサプライズだ。
絶対に本人には言わないけど。
「ねー準さん、オレさ・・・・・オレ・・・・春から一緒に住みたいんだけどダメかな?」
意を決した、って顔の利央が、オレから身体を離して口ごもりながら聞いてきてそれでオレは納得した。
正月から何かを言いたそうにしていたのは、コレか!!!
オレの顔を真っ直ぐに見詰めてくる瞳には真摯な色が浮かんでてこっちが恥ずかしくなった。
迂闊にもプロポーズみたいだ、なんて思ってしまった!
「な、なんで、オレとつきあってんだよオマエ?!」
「えっ?!」
「ほ、他に好きなヤツとかいないのかよ?」
その言葉に一瞬固まった利央の顔から表情が消えたのを見て焦る。
「そ、そーいうんじゃなくて、オ、オレ男だし、オマエもてるんだから他に好みの子とかいてもオカシくねーって言うか・・・」
「ナニ言ってんの。」
「だ、だからっ」
自分でも支離滅裂で誤解を招きそうな言葉を口にしている自覚はあるのに、一端口に出してしまったら止められなくてどんどん墓穴を掘ってて、もうこれはただの嫉妬だって気づいた途端に顔に血が上って利央の足元にあわてて目を落とした。
「準さん」
なんだか分からないけど利央の声が優しいって思ったら骨っぽい手が頬に添えられて少しかがんだ利央の唇が唇をついばんでくる。
「オレの好みは準さんだよ。他にはいない。」
「!」
「いやだったら、ちゃんと言って。それじゃないとオレは理解できない」
なんか最後の方は悲しい顔するから、こっちが罪悪感に苛まれる。しばらく逢わない内になんか大人っぽくなってるって言うか、外堀を埋める技術を身につけてきたって言うか…
「準さん、」
お願いだからって感じに促される。
「オ、オレは・・・・・・・・別にイヤじゃ、なくて・・・ぅ」
「じゃ、いいんだ!」
「・・・・・・・・」
コイツは確信犯に違いない。
さらに嬉しそうな声でオレをぎゅうっと抱きしめた。
「バァちゃんが今度紹介しなさいって!一緒にブラジル行こうね、準さん!!」
「ええー?!」
オレはその時になって始めて利央を侮りすぎていたと気づいたけれど、でもとても幸せな誕生日になった。
利央に逢えてよかった。
2nd Feb 2010
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また後日・・・・・・・力尽きた・・・・・バタリ