悩める野球少年の恋愛力学 利央.5
カキィーンと青空に金属バットの音が響き渡る。
はぁ〜、ナンカいい音だ。
今日も快晴!
「り〜お〜、ぼけっとしてないでさっさとタマよこせ!」
「っス!」
「てめぇ、サボってねぇでキリキリ働けよー!! 」
「っス!」
「りーおー!ちょっと来い!」
「はいっ!」
もう怒鳴り声も気にならないし、練習終わってからのボール磨きだって苦にならない。
こうして一日の半分を準さんと一緒の場所で息できるだけで幸せだ〜
10日サボって部に恐る恐る戻ったおれを待っていたのは地獄のシゴキだった。
慎吾さんの「あと1、2日よく考えろって」って言葉はそれなりの話が監督まで通ってた訳でも何でもなく、おれの提出した退部届けは、ありがたくも和さんのところで止まっていた。
つまりおれはただの無断欠席、サボリの扱いだ・・・・・・・・・・・・当然怒られ、しごかれ、こき使われ、etc、etc・・・・・
理由は聞かれなかったのがいっそありがたい。
こんなの説明できねーよ。
日がな一日怒鳴られながら準さん眺めてられるのは、家でごろごろしてるよりも全然充実している。
ただやっぱり口はきいてくれないし、もちろん目があう事もない。
でもそれはいい・・・・・・自分なりにちゃんと考えて、決心してきたから。
おれは準さんがたとえ口をきいてくれなくても準さんが好きだし、この気持ちはそうそう簡単に変えられないと解ったから。
もしも、ただの捕手としてでも準さんが必要としていてくれるのなら、それでいい。
せめて捕手として準さんに認められたい。
それしか出来ないし、おれの準さんの中での居場所は多分ソコしかないから。
もしも、もしも仲直りできたら、準さんがキモチワルイと思っているならこの気持ちだってかくしてみせる。
多分この夏はベンチもダメかもしれないけど、自分が悪いから仕方ない。
でもただ仕方ないからって何もしないんじゃなくて、前の倍は練習も頑張るし、部の中でも一番働く。
それでせめてベンチには残りたい!
もちろん正捕手が目標だけど、和さんいる限りはなぁ〜・・・・・・・いやいやそんなんじゃダメだよな。
和さんから奪うくらいの気持ちで動く!
これはおれが自分に出した課題。
多分身体動かしてる方が余計な事は考えないし、そんで疲れたら夜もぐっすりだし。
一応一石二鳥を狙ってるんだけど・・・・・・・
「おお〜い、りおー。オマエ怒鳴られながらにやにやしてて薄気味悪ぃぞー」
「慎吾さん。・・・・・・・ほっといてくださいよ」
「まぁでもちゃんと出てきてエライ、エライ」
「あっ、もっ、やめてくださいよっ!髪すぐクセんなるんスからっっ」
「はっはっはっ、おもしれーなー」
意を決して出てきたおれを慎吾さんが何くれとなく世話を焼く、っていうか、オモチャにされてる…
「おい準太!・・・・・・・・・あいつドコ行った?!」
カントクが準さん探してるけど、さっき部室に行ったのをおれは見ていたんだけど・・・・・・多分スパイクの紐がだらーとなってたから替えに行ったんじゃないかな?
ついこっちがハラハラと見てしまう。
「スパイクの紐替えてくるって言ってました!」
よかった、ちゃんとタケさんが知ってて。
「利央ー、準太呼んでこい!!」
って、ええー!何で?! おれデスカ??
部室に行ったのを見てたけど、おれに伝令頼まれるとは思ってなかった。
いや、頼まれないように慎吾さんの後ろに隠れてたのに・・・・・
「聞こえたかァ!利央!」
「はいっ」
あわてて返事して、部室へ走り出す。
その背中に慎吾さんの、報われねぇなぁ〜というつぶやきが聞こえてきた。
はぁー
嫌々・・・・・・・・でもないけど、でも行きづらいんだよな、と思いながらも走って部室へ呼びに行く。
スパイクの紐を替えてたのを、おれが部室のドアに手を掛けたのを一瞬見て、すぐに続きに戻った。
不機嫌でもなく、怒ってるんでも無い、無関心って顔。
「準さん、カントクが呼んでマス」
「・・・・・・・」
まったく無視。
口はきいてくれるとは思ってないから・・・・・・・これはもう解ってたコトだと何度も自分に言い聞かせる。
「おれ、準さんが許してくれなくても正捕手狙います。あんたがムカついてるの解ってるけど、オレにとっても甲子園のチャンスは後2年だけだから・・・・・・・もう、この前みたいのは絶対に、しないから」
「・・・・・・・・・・・・・」
「それだけっス。カントクの事伝えましたから」
扉から手を引き剥がして、来たときとは違って歩き出す。
そしたら後から準さんが走り出てきたのが解った。
ちょっとなんでかホッとする。
まぁおれでなく、カントク呼んでんだから当然行くだろうけどサ。
ぽてぽてと歩いてるのを慎吾さんが心配そうな顔でこっち見てる。
それに苦笑いして手をふった。
慎吾さんの隣では和さんがこれまた心配そうに準さんを見ている。
ほんと、あーあ。
グランド整備も罰片付けも慎吾さんが手伝ってくれて思ったよりも全然早く終わった。
ラッキー!!
全部終わってシャワー室まで行ったら、もう全員帰ってるはずなのに先客がいた。
水音に他の部のヤツかなーと、呑気に中に入っていって見覚えのあるユニフォームにスバイク、そして準さんのブルーの縞のバスタオルに体中の血が逆流する。
おれはあわててシャワー室を出て、外にヘタリこんだ。
やばい・・・・・・・・・・すげぇヤバイ。
こんな時間にわざわざオレがいるリスクを冒してまでシャワーしていると言う事は、まだあの鬱血が残っているのだろうか?
もう消えていると思うけど用心なのかなぁ??
・・・・・・・・それともおれを信用してくれてるの?
あの人電車通学だから、この時期はシャワー無しじゃ帰れないんだよね・・・・・・・・もう、どうすんだおれ?!
バカみたいに立ったり座ったりで、中に入るに入れない。
ブースは10ヶもあるんだから他に入っちゃえばいいんだけど、ヘンに緊張してそれも出来ない。
だいたいブースから出てきて、オレの荷物があったら準さんがいい気持ちじゃないと思うと益々入れない。
そして色々邪なこと考えてるおれには準さんにみんなバレそうで怖いんだ!!!
・・・・・・・・・・いやもうバレてんだけど。
これ以上バレたくないというか、なんと言うか…
うーわー、あの日の準さんが脳裏に浮かぶ!
ふにゃふにゃですっごく可愛いかったんだよね・・・・・・・・・・本人には言えないけど。
『・・・・・・キスしていい?』って聞いたら、あーとか、うーとか、返事したんだよなー。
「・・・・・・ねぇ、ホントにしちゃうよ?」
「う・・・・・・・・ん?」
準さんがもたれてる壁の顔の横に手を付いたけど、全く起きる気配なし。
「準さん?」
頬に唇を寄せて名前を呼んでみたんだけど、これまたサッパリ効果なし。
準さんの無防備な吐息が耳をくすぐって煽られる。
「・・・・・知らないよ?」
どくどくと脈打つ自分の心臓に更にドキドキしてくる。
キスごときでこんなにドキドキするなんて今まで知らなかった。
そっと頬に触れたけど、そこからびりびりと快感みたいに好きな気持ちが体中に広がる。
「・・ねぇ準さん、すごく好きだよ」
溜息みたいに自然と言葉が漏れた。
初めて触れた準さんの唇の柔らかさに感動して、起きないかな、と唇を優しく食んでみた。
それでも起きなくて、身体をそっと抱きしめてみる。
「うん・・・・・・・」
流石にちょっと身じろぎしたんだけど、ちょうど口唇が開いて誘われるように舌を滑り込ませた。
しっとりとした感触に体温が1℃上がった。
なんの警戒もしてない口の中を舌で舐る。
何度か角度を変えて今までのキスの中でも一番優しいキスをする。
苦しくなったのか、手でおれを押しのけようとするからちょっと放してあげた。
「準さん・・・・」
「んぁ…りおう?」
「起きた?」
「んー」
愛しさでイッパイでもう一度キスした。
「んん・・・・・りお」
それから徐々に唇を首筋から鎖骨、シャツのボタンを外して胸に落としていく。
「・・・・・・・・ふぅ・・・・・・ん、」
大人しい準さんに励まされて、とうとうベルトに手を掛けて、その下の下着にまで手を滑り込ませた。
「・・・・・・・ふぅ・・・・・」
反応する準さんを取り出して、唇を這わせてキスしたらものすごく色っぽい声出されてこっちがのぼせそうだ。
それから口に含んで、快感を引き出すように舌で形をなぞるように丁寧に舐めしゃぶった。
「あっ」
一瞬準さんの身体が、ビクリと痙攣した。
と思った途端ものすごい勢いで何かが飛んできて目にヒットした!
あれ、今にして思えば蹴られたんだよなぁ・・・・・・・・
それから準さんはシンジラレナイもの見る目でおれを凝視して、悪夢から覚めたみたいな顔で急にしゃっきりしたんだよね。
きっと覚えちゃいないんだろうけど。
ちっょとだけ恨めしい。
だったら初めからしゃっきりしててくれれば、アンナコトニはならなかったのにっっ!
ふわふわに柔らかかった準さんの唇の感触が甦ってきた。
ああ、もうマジやばいよっっ!!半勃ちだ!!いやいや平常心、平常心!
おれだってオトコなんだからしょうがないよー!!!
そうこうするうちに、シャワーブースから準さんが出てきた音がする。
荷物持って逃げようとしたら、中に鞄置いて出てきた事に気づく。
おれが準さんの荷物を見分けられるように、きっと準さんにもわかったと思う。
ああ〜っっっ!
28th Sep 2007
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