サンタはいらない : 前編













I don’t want a lot for Christmas


「また歌の練習かよ〜」
「仕方ないっしょ、おれ等のガッコてミッションなんだからさー」
「神父さんたちで好きに盛り上がればいいじゃんかよー」
「うた歌う係りがいるでしょ」
「メンドクセー!CDにしてくれー」


There is just one thing I need I don’t care about presents


「野球部なんて朝練と思えば楽なもんだろー」
「バカヤローおれ等は天下の受験生だっての」
「もうクリスマスなんて、ケーキとプレゼントあればいいじゃん!日本人なんだからさー」

「朝から晩まで時間とられて受験のスタートが遅いとか言われてもなー」
「クリスマス・ミサは取りやめで」
「だいたいキリストが生まれたのって12月じゃ辻褄合わないらしいじゃん」
「ローマが占領地統合の為に使った方便だろ?」


More than you could ever know 
Make my wish come true …



 この時期学校では1ヶ月かけてクリスマス・ミサに向けて聖歌の練習を全校生総出で行う。
朝は早く出てきて、昼休みも潰し、放課後も残って練習させられる聖歌は、当日にはすばらしい出来ではあるけれど。
どうしたって練習させられる生徒からはブーイングが出る。

 朝は寒いし、昼休みもゆっくり出来ない。
あまつさえ放課後も拘束されては文句が出ないほうがオカシイ。

 高校生にもなれば行事に対しての評価もシビアだ。
そして大人になってしまえばサンタなどいないのだと判ってしまう。

本当に欲しいものはサンタに頼んでも手には入らないから。



Santa Claus won’t make me happy
with a toy on Christmas day


 
講堂に集まって最後のミサの合わせ練習。 
担当パート毎に並べられる合同練習では学年は関係なく、身長でだいたいの場所を決められる。
同じような身長の高瀬準太が、1年先輩の島崎慎吾の姿を見つけて駆け寄った。
3年も既に部は引退しているのでこんな機会でもないと同じ構内でもめったに会えない。
同じような身長なのをいい事に先週の場所決めで隣になっているのだ。
準太が尊敬してやまない、河合和己はパートが違うのでここからは見えない。



I won’t ask for much this Christmas
I won’t even wish for snow


準太の目の端に映った利央が実に残念そうな顔で溜息をつくのが見えた。
こんな機会でもないと一緒に居られないのは1年生の仲沢利央も同じだが、いかんせん180cmも超えるほどに伸びた身長が同じ列に並ぶのを阻む。
いつもはもっと伸びたらいいと思っている身長だが、今日は生まれて初めてそれを恨めしく思った。

密かにその利央に気づいた慎吾がくつくつと笑いながら準太に聞いてくる。



I’m just gonna keep on waiting underneath the mistletos



「最近の利央のヤツが歌ってる鼻歌って歌詞の中身知ってるか?」
「知らないっスけど、クリスマスがどうとかって言ってるから聖歌の類ですかね?」
「オマエ洋楽とか聴かねぇ?」
「あんまし聴かないッスね」
「Jポップすら聴かないカンジだな、準太くん」


What more can I do



大抵の事はそつなくこなす情報通の地獄耳は、野球部を引退した今も健在らしい。
野球以外に興味のない準太をからかうような口ぶりに周りを憚ってこそこそと反論する。

「別に死にませんから。音があるといろいろ集中できないでしょ?」
「おおー、ベンキョウしてるような口ぶり!!」
「慎吾さんこそ、呑気にやってると落ち・・・おっと」
「はっはっはー!オレは推薦決まったもんね〜!」
「ええーっっ!!おめでとうございます!いつ決まったんスか?」
「や、昨日っていうか、そんな事よりだなー」

「そこ!始めるから私語慎みなさい!」

やべぇ、と2人で頭を縮めた。
気がつけば担当の音楽教師が指揮台に立ったところで、周りはシーンと合図を待っている。
ピアノは2年の女子が担当しているらしい。

「゛もろびとこぞりて゛からいきますよ、出だし気をつけて!」
そう言って右手を振り上げたのを合図にピアノの伴奏がはじまり話は中断してしまった。





本当は知っている。
その歌の題名を。
だれが歌っているのかも。



事実あまり音楽など聴かないのだが、クリスマスシーズンともなれば当然クリスマスソングで街中は埋め尽くされる。
ラジオもTVも店の中のBGMも、これでもかとクリスマス一色だ。

偶然立ち寄ったCDショップで店内で流れていたのに、聞き覚えがあるなと見上げた画面に、雪原をバックにサンタクロースをイメージした真っ赤な衣装をつけた歌手が歌うのが映っていた。
その下には歌詞が英語そのままでキャプションが付いている。
音楽にあわせて目で追いやすいように単語が跳ねる。
あれ以来サビの部分がずっと耳に残っている。

恥ずかしくて、間違っても『知っています』などとは言えない。
歌詞までは覚えていなくても、利央の鼻歌が耳から離れない。





All I want for Christmas is you・・・・







                           後編→











                                       24th Dec 2007


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綴りとかが違ったら許してクダサイ・・・・・突貫工事にて自分の首を締めまくる今日この頃・・・・原稿に戻ります・・・・くっ・・・・orz
歌詞の訳を一応。相当はしょってマスよ。
適当に抜粋していますので、そこら辺よろしく。



                    クリスマスにはそんなにたくさんいらない

                    欲しいものは1つだけ。プゼントなんてどうでもいい
                    あなたは知りもしないでしょうけど
                    どうか私の願いを叶えて
                    サンタさんのクリスマスの玩具じゃ嬉しくない
                    今年のクリスマスにはあんまりおねだりしないし
                    雪も降らなくていい

                    ヤドリギの下でずっと待っているから
                    他にどうしたらいいの

                    クリスマスに欲しいのはあなただけ